あふぇりえいと

2012年1月5日木曜日

第57回青少年読書感想文コンクール:県優秀賞作品/10

第57回青少年読書感想文コンクール:県優秀賞作品/10 中学校 /滋賀


 ◇自分をみつめて--県立河瀬中1年・寺村那歩さん

 人は何かに惹かれたり自分を守ろうとするとき、「裏切り」という罪を犯してしまう。一哉の母が、それまでの母と変わってしまったとき、一人になってしまう父への同情以上に一哉が悲しく思ったことが何かわかる気がする。壊れた母が泣きながら一哉に謝ったことだ。母自身が何の迷いもなく勝手に決めてドイツへ発ったのなら、一哉は素直に恨むことができたと思う。だが、一哉は母が本当に悪いと思っているように泣いて謝ったことが悲しいと思ったのだ。だが、母が自分のやりたいことや自分の幸せのために家族を裏切ったという事実は変わらない。そして、幼い故に何もできなかった一哉を巻き込もうとしたことも変わらないのだ。その時はまだ一哉は母が言ったことの意味をよく理解していなかった。だが一哉は、幼い頃からの何か悪いものがやってくるという予感がついに来たと悟っていた。私は一哉が感じていた悪い予感がどういう感じなのかわかる。私も幼い時に両親が離婚していて、母が家を出て行く前自分がどんな気持ちでいたのか覚えている。周りの大人達の変化に、子どもは大人が思っているよりも気づくものなのだなと今改めて思う。
 一哉は自分で残ると決めた。はっきり自分の意志を持って物事を決めた一哉はすごいと思う。一哉のそういう迷いのないところは、私に欠けている部分だ。深い考えがなくても衝動的だったとしても、最後まで自分の意志を裏切らないで物事を決められる一哉に憧れる。文化祭のコンサートを抜け出したこともそうだ。オルガン部部長としてものすごく無責任な行動だった。だが、一哉は自分に嘘をつかなかった。母と結びついてしまう「神はわれらのうちに」を、納得いく形で弾けない。自分の演奏が気に入らなかったのだ。ひどくはないのだから、弾いてしまう方が楽なのかもしれなかった。だが一番大切なのは、自分の演奏に自分がどれだけ入り込めるか、どれだけ楽しめるかだと思う。一哉はそれが今の自分にはできないとわかっていた。だから投げ出したのだ。

0 件のコメント: