あふぇりえいと

2010年1月5日火曜日

湖国ふしぎ巡り:/3 人魚 /滋賀

湖国ふしぎ巡り:/3 人魚 /滋賀

 ◇無益な殺生、戒め

 「この顔を見てごらん。人魚は美しい女性の印象を持たれているが、これはどう見ても男性。かつては人を川に引き込んだり悪さをする『妖怪』として扱われていたようだ」

 本堂で供養されている「人魚のミイラ」に手を合わせ、願成寺(東近江市)の松尾徹裕住職(48)は言った。その人魚は、老人のような深いしわの刻まれた顔に鋭い牙を生やし、細腕で頭を抱え、何かにおびえているようにも見える。下半身は大きなコイのよう。かつて同寺の美しい尼僧を慕って、小姓として仕えていたところを村人にとがめられ、ミイラにされたと伝えられる。

 国内の記録に初めて人魚が登場するのは近江の地とされる。「日本書紀」619年の項に「近江国言わす、蒲生河に物有り、其の形人の如し」とある。松尾住職は「伝説の真偽は不明だが、子供を水辺に近づかせないなど、妖怪が行動を戒める役割を果たしていた可能性もある。人魚が社会的に必要だったんだろう」と話す。

 人魚のミイラは観音正寺(安土町)にも伝わっていた。93年の火災で本堂もろとも焼失し、写真だけが残る。くぼんだ目や、歯が3列もびっしりと並ぶ口は異形そのもの。「小さいころはやんちゃすると、祖父や父に、ミイラを安置した本堂に放り込まれましてね。怖かったですよ」と岡村瑞應住職(42)は笑う。

 琵琶湖のほとりを歩いていた聖徳太子に、この人魚が懇願して言うことには「私は堅田の漁師でしたが、あまりに無益な殺生をしたためにこんな姿になってしまい、苦しい。成仏させてください」。聞き入れた太子が千手観音像を刻んだのが同寺の縁起という。

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